翌日の朝、果たして何事もなかったかのようにウソップはゾロの檻の前に立った。 否、何事もなかったかのように振舞っているが、身を覆っている空気は硬い。 掛けたベッドから腰を上げるとびくりと小さく震えたのも期待を裏切らず、ゾロは笑い出したい衝動に駆られた。 遠くもない鉄格子にゆったりと近付き、両腕を広げて掴む。 大きくも小さくも聞こえないガシャンという音に、ウソップは息を呑んで反射的に壁に張り付いた。 囚われているのはゾロだが、傍からは逆のように見えるだろう。 狩られる側の本能的な恐怖がウソップを竦ませている。 その本能を良しとせず、引いた自分を恥じるようにまたゾロの前に立つのも堪らなかった。 名前と外見以外、ゾロがウソップについて知っていることはほとんどない。 しかしその知ったわずかな部分がおもしろく、好ましい。 「おれが怖いみてェだな」 にやりと口角を上げる。安い挑発にウソップは容易く乗った。 はじめに立った位置より一歩近付く。 「怖くねェってか?」 へえ、と揶揄ればまた一歩。 格子を挟んですぐ目の前、手を伸ばせば届く位置から睨みつけてくるウソップに、ゾロは肩を揺らした。 捕まらない自信があるからこそ、こうして近付いたのだろうが、本当におもしろい。 笑うゾロに向かって、怖くなどないと鼻息を吐き、気はすんだといったふうにウソップは元の位置に戻ろうとする。 その、くるりと向けられた背にゾロは目を細めた。 危険信号や本能的な怯えや恐怖を無視するのは人間独特のものだと思う。 手懐け捻じ伏せ、意地を張らなければいけない瞬間はあるだろう。 ウソップにとって今がその時だったのかもしれないが、詰めが甘い。 「な……ッ!? あ……ッ、ぐッ!!」 「大人しく……はしねェだろうが、一応大人しくな」 腕が楽に抜ける格子の間から、ゾロは背を向けたウソップの首を掴んで言った。 暴れるウソップが喉を掴むゾロの手を引っ掻く。 ガリリと爪を立てられたが、千載一遇のチャンスだ。 多少の痛みには目を瞑り、声を上げられないようにきつく喉を締めながら悠々と牢の鍵を壊す。 力任せに叩きつければ、頑強な鍵もゾロにはなんの枷にもならなかった。 「……ッ!」 檻越しに感じるウソップの体がびくりと強張る。 キィと細く扉を開いただけで抵抗はさらに激しいものになった。 「さて……」 扉は開いた。 しかしゾロが外に出るにしてもウソップを引きずり込むにしても一旦は捕らえる手を離さなければならない。 どうしたものか、としばし考えた末、ゾロはウソップの首をさらに絞めた。 呼吸を阻害され脳への血流が減り、次第に足掻く力は小さくなる。 力なく震える手がずるりと落ちたのを確認してから、ゾロはウソップを檻の中へと連れ込んだ。 酸欠で朦朧としているウソップは、床に転がされても指一本動かせずただ喘ぐだけになっている。 それを見下ろし、開いた扉を閉じてからゾロは制服のウソップに圧し掛かった。 言葉を発せない唇がやめろと動く。 微かな抵抗を薄く笑って服の上から体をなぞり、萎えたままの股間を掴んで耳元に唇を寄せた。 「自分がどう見られてたか、知らないわけじゃねェだろ」 抵抗は自由だが、ウソップがゾロから逃れられるかどうかはもう運次第だ。 時間が掛かるほど、それはウソップに傾くがゾロにそれをくれてやる気はない。 固くなる気配のない股間を数度ぐりりと揉み上げて、ゾロはベルトを外した。 太腿の中ほどまで下着ごと一気にズボンを下ろし、下肢を曝す。 ようやく幾ばくかの力を取り戻したウソップが暴れ出したので、ゾロは痩身をうつ伏せに返し左腕を背に捩じ上げ、逆の半身は体で押さえ込んだ。 「おれはここを出て行く」 「……仕返し……か、よ……ッ」 掠れた声が閉じ込められた仕返しかとゾロを責めるが、そんなつもりはない。 逃げることは容易かったものを、わざわざ捕まったのはゾロだ。 脱獄するのもその気になれば簡単なもの。 他国の堅牢な監獄と、監視カメラさえなく、いまだに囚人に動きがあれば笛で知らせているようなこの小さな島国の監獄とはまるで違うのだ。 今それを教えてやる場面ではないが。 一月もの間留まったのは、ウソップがいたからだ。 その興味が、単に欲望に起因するものかそれとも好意を持っているのかはまだゾロにも判別がつかなかったが、事は起こしてしまった。 今さら後には引けないし、引く気もない。 本当なら、時間を掛けて慣らしてやりたいところだが逃げられる危険を思えば早急に奪っておく方がいい。 自分という傷をつけて、ゾロは出て行く。外の世界でもこの男が追いかけてくるように。 薄く笑って、柔らかな尻肉に自身の屹立を押し付け擦り付けると、ゾロの本気を悟ってウソップは身を捩った。 髪を掴み、腰だけを高く上げさせ、何の潤いもなく固く噤んだ後孔に切っ先を当てる。 身を捩り振りほどこうと暴れるウソップをきつく押さえ込み、何度も押し付けて円を描くように縁をなぞるとそのたびにウソップは体を強張らせた。 ゾロとしては滲む先走りで気休め程度ではあるが、濡らしやっているつもりだったがウソップには嬲られている感しかないかもしれない。 そう思ったものの、それもまぁいいかと拒絶されるまま受け入れた。することと言えば、言い訳しようもない犯罪だ。わかっていて犯す。欲しいものは、奪うものだ。 「力、抜いとけ」 「ぃ、やだ……ッ!」 弛む気配のない中心に、ゆっくりと力をかける。 「ぃや……ッ、だッ! やめろ……ッ、やめ……ッ」 狭い入口を割って僅かずつ入り込む。 やめろという制止はやめてくれという懇願に変わり、しゃくり上げる声に掴んだ髪を引けば歪む顔には幾筋もの涙が流れていた。 ぞくりと背を這い登る興奮。苦痛を訴える表情に興奮するなどはじめてのことだった。 知らなかった自分を発見したゾロは少し驚いたが、引かず、そのままゆっくりとウソップを貫いた。 「ぅ……ぎ……ッ、い……ッ!!」 きつく締め付けてくるウソップの体内は熱く、脈打つ自分のものがよくわかった。 痛みを和らげようと無意識にウソップは浅い呼吸を繰り返す。 必死になって力を抜こうとしているが、異物に怯えるようにひくりと蠢く後孔にたまらなくなって、まだ馴染みきらない中から、ゾロは入れたときと同じ速度で引き抜いた。 尖端だけを残し抜いて、また沈める。 ぎちぎちに締め付けてくる肉の輪で自身を扱くことを数度繰り返した時、小さな悲鳴が上がった。 切れたらしいと知れたのはぬるりと滑る感触があったからだ。 痛ましいとは思ったが、酷い事に、この際都合がいいかとゾロは抜き差しを早めた。 「……はッ、すげ……」 「ぃ……てェ……ッ、いた……ぃ……い……ひッ……ッ」 ゾロが快楽を追うほどウソップの痛みは増すのだが、ねっとりと絡みつく感触に、思いやる余裕も消える。 「ひ……ッ、ひ、い……ッ」 押さえつける必要もなくなったウソップの腕を放し、腰を抱いて打ち付ける。 「ぁ、……ッあ……ッ、い……ッ」 力ない手で床を掻き、ウソップが上げる声はただ辛いものだったが悲痛な音色は喘ぎにとてもよく似た。 肉のぶつかる音が寒々とした牢内に響く。 ゾロとウソップの周囲だけが熱く、冷えた黒い床にはぱたぱたと汗が落ちた。 限界が近かった。高まる射精感を追って激しく打ちつける。 「あぁ……ッ、あ……ッ! ぁ……ッ」 「……ッ!」 一際深く貫き、ぶるりと腰を震わせる。 体の中に広がる熱い体液の感触にウソップは目を見開いた。 全てを最奥に注ぎ込み、存分にウソップを味わい抜き出した。 自身の欲を満たし見下ろすウソップは絶え絶えの息で、もう動くこともできないようだった。 ゾロに蹂躙しつくされたウソップの後孔は酷い裂傷をおい、閉じきらない孔からは血と精液とが混ざり流れる。気を失ったウソップの下には、異臭を放つ水溜りができていた。 Next |
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